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幼年期のお子さんには、ふんだんに愛情を注いでください!

今回のブロクは海外サイトhttp://www.yourtango.com/2016298017/seven-ways-childhood-trauma-can-change-your-brain

からの内容です。

少し衝撃的な内容かもしれませんが、トラウマとは脳に刻まれたものです。

医療と脳科学のブレークスルーは既に始まっています。

本文の結びの言葉ですが、「脳と体は決して不変なものではありません。 常に変化していく過程にあるのです。」

 

少し長いのですが、最後まで読んで頂ければ幸いです。

 

軽減されない慢性的な感情的、肉体的な健康状態、そしてそれは、決して止むことのない見えない流れに逆らって泳ぎ続けているように感じるかもしれません。そんな状態がちょっと辛く、ちょっとばかり長く続いているのはなぜだろうと思ったことが、もしもあれば、ある科学研究の新しい分野は、希望、答え、癒しの見通しを与えてくれるかもしれません。

 

1995年、ビンセント・フェリッティ医師とロバート・アンダ医師は、子供と思春期の被験者17,000人におよぶ履歴を徹底調査する大規模な疫学研究を立ち上げました。それは、子供の時の経験とその後の大人になった時の健康記録を比較するものでした。

その結果は衝撃的でした。約2/3の被験者が有害幼年期経験(Adverse Childhood Experiences ,ACEs)を一回かそれ以上経験しています。

有害幼年期経験(ACEs)は、フェリッティ医師とアンダ医師によって、子供が直面する慢性的、予測不可能そしてストレスを誘発する体験を網羅するために新たに作り出した用語です。

これらは、うつ状態もしくはアルコール依存の親と一緒に育つこと、離婚や他の原因で親を失うこと、慢性的に恥をかかされることに耐えること、感情無視、性的もしくは肉体的虐待などを含みます。

これらの幼年期の感情的トラウマの形態は、日々成長に必要な体験課題の枠を超えていました。有害幼年期経験(ACEs)の回数は驚くほどの正確さで大人になった時に、どれだけ医療にかかるかを予測していました。

  •  有害幼年期経験(ACEs)のカテゴリーの4つ以上に直面した場合、幼年期に逆境を経験していない場合と比較してがんと診断される可能性が2倍高かった。
  • 女性の場合、それぞれの有害幼年期経験(ACEs)スコアが加算されるに連れて、自己免疫疾患で入院するリスクは20%上昇しました。
  •  有害幼年期経験(ACEs)スコアが4の人は、有害幼年期経験(ACEs)スコアが0の人よりうつ病に罹患する可能性が460パーセント高くなりました。
  • 有害幼年期経験(ACEs)スコアが6以上であれば、寿命は約20年短縮されました。

幼年期の慢性的で予測不可能な毒性ストレスの経験は、成人期に慢性的な状態になる傾向にあることを有害幼年期経験(ACEs)の研究は物語っています。しかし、なぜ?

昨今、国中の研究室で神経学者たちは、かつては不可解だった脳と体の繋がりを覗き込こみ。生科学的レベルで、まさに、どの様にして私たちが若い頃に直面したストレスが大人になるまで影響を及ぼし、体、細胞そしてDNAさえ、変えてしまうのかについて解析中です。

科学者が見つけたものに驚かされるかもしれません。

子供の頃のトラウマについてのこれらの科学的な発見の一部は、熟慮するには少し圧倒的でさえあります。

私たちは、感情的そして肉体的な痛みがどの様に絡み合っているのか考え直さなくてはなりません。

 1.    将来のストレッサーに効果的に対応する能力の喪失

幼年期や思春期に何度も何度もストレスを誘発する状況に晒されると、生理的ストレス反応はオーバドライブになり10年、20年、たとえ30年後さえ、将来のストレッサ―に対し適切で効率的な適応能力を失います。

これは、DNAメチル化として知られているプロセスのために起こります。小さな科学的指標、すなわちメチル基は、ストレス反応を調整に関与している遺伝子と結びつき、これらの遺伝子が正常に働かなくなります。

遺伝子の機能が変えられるにつれ、ストレス反応は、生命に対し"高い状態"に再設定され、炎症と病気が促進されます。

これは、私たちが大人の生活の中で経験する毎日のストレッサー(予期しない請求書、配偶者との不一致、または高速道路で私たちの前に、急に割り込む車など)に過剰反応し、より多くの炎症を引き起こす可能性が高くなります。これは次第に、自己免疫疾患、心臓病、癌、うつ病を含む多くの慢性疾患の原因となる。

事実、イエールの研究者は最近、慢性毒性ストレスに直面する子供たちは、"全ゲノムにわたって"ストレス応答を監視するだけでなく、広範囲の成人病に関与する遺伝子においても、変化を示していることを発見しました。 初期の感情的トラウマ、エピジェネティックな変化、および成人の身体疾患に関するこの新しい研究は、医療界が長い間「肉体的」疾患と見なしてきたものと「精神的とは?」または「感情的とは?」との間の長年の図解を切り崩します。

 2.    脳の大きさと形の収縮

科学者は、発達中の脳が慢性的なストレスを受けると、感情と記憶を処理し、ストレスを管理する脳の領域である海馬の大きさを実際に縮小させるホルモンを放出することを発見した。 最近のMRI研究は、有害幼年期経験(ACEs)スコアが高いほど、脳の鍵となる他の領域の前頭前野(意思決定および自己管理能力に関連する領域)そして、恐怖処理センターである扁桃体において、灰白質がより少ないとことを示唆しています。

有害幼年期経験(ACEs)によって脳の働きが変わってしまった子供たちは、成人になると軽度のストレス要因にも過度に反応する可能性が高くなります。

 3.    気分障害の可能性が高い

子供の場合、ニューロンとシナプスの接続は過剰です。子供の脳は一生懸命に働き、周囲の世界を理解しようとしています。最近まで科学者たちは、過剰なニューロンと接続の刈り込み現象は単に"使わなければなくなる"方式でなされると信じていましたが、驚くことに、脳の発達過程で新たな役割を担うものが現れたのです。

それは、非神経細胞であり、実は免疫系の一部であるミクログロリア(全脳細胞の10分の1を占める)が刈り込み現象に携わっています。

庭師が垣根を刈り込むように、これらの細胞はシナプスを刈り込みます。全ての細胞と細胞破片をのみ込んで、消化します。そして、それによって重要な整理整頓の役割を演じます。

しかし、子供が有害幼年期経験(ACEs)の予測できない慢性的ストレスに直面した場合、「ミクログロリアは、確実に活動が高ぶり、神経炎症を引き起こす神経化学物質をどんどんと機械的に作りだします。」

「この目立たない状態の慢性神経炎症は、脳のトーンをリセットする変化につながります。」と脳の発達過程を研究しているメリーランド大学メディカルセンターの研究チームのマーガレット・マッカーシー博士は語ります。

それは、有害幼年期経験(ACEs)の履歴があったり、信頼できる愛情のある大人の存在を欠いて育った子供たちが思春期になった時、気分障害を発症したり、実行機能や意思決定スキルが低下したりする可能性が高くなることを意味します。

 4.    テロメア

感情的な表現になるが、幼年期のトラウマは、仲間たちより「年上」に見られるようにしてしまいます。現在、デューク大学、カリフォルニア大学、サンフランシスコ、ブラウン大学の科学者たちは、有害幼年期経験(ACEs)が細胞レベルで子供を時期尚早に老化させる可能性があることを発見しました。

幼年期にトラウマに直面した成人は、ゲノムを健康で無傷に保つテロメア(DNA鎖の端にある保護キャップ、例えば靴ひものキャップのようなもの)がより多く侵食されています。 テロメアが腐食するにつれて、病気が発症しやすくなり、細胞もより早く老化します。

 5.      回りの世界に適切に反応する時の問題

私たちの脳の内部で、 "デフォルトモードのネットワーク"と呼ばれる神経ネットワークは、道路でアイドリングしている車のように、静かに鳴り響いています。それは記憶と思考の統合に関連する脳の領域を結びつけ、いつもスタンバイしていて、次に何をする必要があるかについて理解する準備ができています。

「脳のこれらの領域の密接な接続は、関連性があるものと関連性がないものを判断するのに役立ち、その結果、周りの様々な環境に対応する準備ができるのです。」と神経科学者、精神医学の教授そしてオンタリオ大学の心的外傷後ストレス障害(PTSD)研究部門局長のルース・ラニウス教授は説明します。

しかし、子供たちが幼年期に有害幼年期経験(ACEs)に直面し、日常的に闘争・逃避反応モードに陥ると、デフォルトモードネットワークがオフラインになり始めます。 それはもはや、何が関連しているのか、あるいは次に何をする必要があるのかを理解する助けにはなりません。

ラニウス教授によると、幼児期にトラウマに直面した子供たちは、トラウマが刻印されて数十年後でさえ、デフォルトモードネットワークの接続性が低下しています。 彼らの脳は、健全なアイドリングポジションに入るようには思えないので、周りの世界に適切に反応するのに苦労するかもしれません。

 6.    ストレスは肉体的苦痛をもたらす

最近まで、脳が「免疫特権」、すなわち、体の免疫系から遮断されているということが科学的に認められていました。しかし、バージニア大学医学部の研究者たちによって行われた画期的な研究によると、それはそうでないことが判明した。

 

研究者らは、リンパ管を介して脳と免疫系との間を移動するわかりにくい経路があることを発見したのです。リンパ系は循環系の一部でリンパを運びます。リンパは毒素を排除したり、免疫細胞を身体のある部分から別の部分に移動させる液体です。今、我々は、免疫系の経路には脳が含まれていることを知っています。 

この研究の結果は、有害幼年期経験(ACEs)研究に深い意味があります。有害幼年期経験(ACEs)がある子供にとって、精神的苦痛と身体的苦痛との関係性は強く、慢性的なストレスを受けると、子供の体に溢れ出す炎症性化学物質は、体だけに閉じ込められません。頭からつま先まで循環するのです。

 7.    不安やうつ病を発症するリスクが高い

神経精神医学者でウィスコンシン大学の小児・青年精神科助教授であるライアン・ヘリンガは、慢性的な幼児期の逆境を経験した小児および十代は、前頭前野と海馬との間の神経接続が弱いことを発見した。また、女の子の場合、前頭前野と扁桃体の間の繋がりが弱いことが示されました。

前頭前野と扁桃体の関係は、私たちの日常生活において、どのように感情的に反応するのか、そしてまた、どの様に日常の出来事が、ストレス状態もしくは危険と知覚するのかを決定する重要な役割を演じます。

ヘリンガ氏は語ります。

「もし、有害幼年期経験(ACEs)があり、これらの神経接続が弱い女の子ならば、成長するにつれて、あらゆるストレスの多い状況に遭遇した時には、より多くの恐れと不安を経験するかもしれません。」

ヘリンガ氏は、これらの神経接続が弱い少女は、思春期の後期に不安とうつ病を発症するリスクが高かったことを見出しました。これは、ある部分、女性が思春期後期の気分障害に苦しむ割合が男性の約2倍である理由を物語っています。

この科学的研究は、特に親である私たちにとって、圧倒的であるかも知れません。愛する子供が幼年期の苦境の影響を受けているなら、何をすることができるでしょうか?

良い情報としては、逆境が発達中の脳にどの様に影響を与えるかに関する科学的理解が進んでいるのと同様に、困難にもよく対応できるような育児で愛する子供を育てる方法と小さなあらゆる手段により身体と脳を癒す方法に関する科学的理解もまた進んでいることです。

体の傷や打ち身が治癒するのと同じように、また筋肉の調子を取り戻すことができるのと同様に、脳の神経回路を再配線することで機能を回復させることができます。 脳と体は決して不変なものではありません。 常に変化していく過程にあるのです。

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題名は「身体はトラウマを記憶する」脳・心・身体のつながりと回復のための手法 

紀伊国屋書店  著者:ベッセル・ヴァン・デア・コーク