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スポーツ脳震盪

脳震盪の臨床診断で問題のないケースであっても、脳に加わった(一時的な)ダメージが充分に回復しないうちに競技に復帰した場合に、更に重大な脳損傷に繋がる例がしばしば報告されています。

また、一見何にもないように見えても、脳の中では様々な変化が起きており、その根拠が最近の研究で次第に明確になってきました。

別冊日経サイエンス No 218 脳科学のダイナミズムによれば

脳震盪から脳疾患へ

頭部に何度も衝撃を受けると、精神障害になることは以前から知られており、そうした障害が現れたボクサーは「パンチドランカー」と呼ばれる。

アメリカンフットボールの選手にこの問題が指摘されるようになったのはここ10年のことで、また、この障害の病理学的マーカーが培検(病理解剖)で特定され、この障害は現在「慢性外傷性脳損傷(CTE)」と呼ばれている。

NFL(プロアメリカンフットボールリーグ)の選手が頭部に繰り返し衝撃を受けるために、引退後に重度のうつ病や記憶喪失。奇行や攻撃的行動、早期痴呆を呈しているという説に、いまだに懐疑的あるいは否定的な学者もいる。

だが、精神障害の症状が出た後に自殺あるいは死亡した元NFL選手の数は気がかりなほど多い。

そして、彼らの多くは、脳に障害があるのではないかと悩み、自らの脳を科学的研究に使ってほしいと申し出た。

つい最近の例は、元シカゴ・ベアーズの名セーフティ、デュアソンだ。彼は自分の脳を研究のためにNFL脳バンクに提供するとの遺書を残し、頭でなく胸を撃って2011年2月に自殺した。

培検の結果、他の多くの例と同じく、デュアソンがCTEを患っていたことが判明した。

                   ~中略~

長年にわたってNFLから否定され、科学界からも懐疑的にみられてきたCTEが、「今では広く、みとめられつつある」とマッキーは言う。「折り返し地点は確実に越えた。同調する人がどんどん増えている」。

NFLも見解を変え、マッキーが共同センター長を務めるボストン大学外傷性脳損傷研究センターに100万ドルの研究費を寄付した。  (マッキー: ボストン大学とマサチューセッツにあるベットフォードVA医療センターに所属する神経病理学者) 

                                       ~以上~

BSTの研究デレクターのサン・リー博士のSBMT(脳マッピングおよび治療協会)の第13回年次総会での発表の中身

 

昨年、フロリダ州マイアミで行われたSBMT(脳マッピングおよび治療協会)の第13回年次総会でBSTの研究デレクターのサン・リー博士は、世界的に有名なベネット・オマル博士の講演の前に、軍事におけるトラウマ(PTSD)のセッションのデータを示したプレゼンテーションを行いました。(研究は、特殊作戦を通じて米国国防総省によってサポートされ、ウェイクフォレスト大学医学部で行われた。)

ウェイクフォレスト大学医学部での研究はBSTと表現せずに、HIRREM(High-resolution Relational Resonance-based Eletroencephalic Mirroring)と表現しています。

リー博士のプレゼンテーションの内容は以下のとおりです。

  •  HIRREMの使用はPTSD症状の顕著な改善、ならびに心拍数と血圧の調整機能の改善
  •  外傷性脳損傷(TBI)およびスポーツ関連の脳震盪の顕著な改善

ベネット・オマル博士はSBMTから医学賞のパイオニアという名誉を与えられました。

オマル博士は、元NFLの選手でスーパーボールのチャンピオンである有名なマイク・ウエブスターの司法解剖でCTE(慢性外傷性脳症)を初めて記述した神経病理学者です。

オマル博士とマイク・ウエブスターの話し、そしてNFLの反応は、ウイル・スミス主演のハリウッド映画「Concussion」(原題)のテーマとなっています。

映画のストーリー:

単なるスポーツの枠を超えて、いやまアメリカを代表するエンターテインメントとなったNFL。毎週2000万人ものファンを熱狂させ、多大な経済効果と雇用を生み続ける"アメリカの夢"。そんな巨大組織がひた隠しにしてきた業界の闇に、たった一人で立ち向かった外国人医師がいた。

『Concussion』は、全米を揺るがした衝撃の告発に基づく実話ドラマ。アメリカ社会の正義と理想を信じて孤独な戦いを続け、ついにはNFLを動かすに至った、不屈の男の物語だ。

ナイジェリアから夢を抱いてアメリカにやってきたベネット・オマルは、優秀で誠実な医師。2002年、ピッツバーグで検死官を務めていた彼は、元NFLの名選手マイク・ウェブスターの変死解剖を担当する。

"史上最高のセンター"と言われながら晩年は奇行を繰り返し、車の中でホームレス同然の生活を送っていた地元の英雄。

という見解を発表し、危険な論文を撤回させるべく、絶大な権力を駆使してオマルを締め上げていく──。

その寂しい最期に不審を抱いたオマルは、周囲の反対を押し切ってマイクの脳を精査。長期間にわたって激しいタックルを受け続けることにより引き起こされる「CTE(慢性外傷性脳症)」という新たな疾患を発見し、マイク以外にも多くのプレーヤーたちが精神を病み、謎の死を遂げていることに気付く。警鐘を鳴らすべく、オマルは医学誌に論文を発表。

しかしNFLは、アメリカの国民的スポーツを根底から揺るがしかねないこの事実を、全面的に否定。逆に「試合中の衝突で脳震盪を起こした選手はいない」という見解を発表し、危険な論文を撤回させるべく、絶大な権力を駆使してオマルを締め上げていく──.

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